特集「サイディング」について
住宅の外壁材として選ばれるサイディング
住宅は、基礎・柱・壁面などからなる躯体(くたい)によって構成されています。
住宅を形造る躯体を雨風や紫外線などのから守っているのが外壁です。住宅の外壁材としては大きく分けて、モルタルとサイディング使われています。
ここでは、外壁材として使用される「サイディング」について、特徴などを解説します。
古くから外壁材として使用されてきたモルタルに代わって、なぜ、サイディングの需要が増えたかや、サイディングを外壁とする利点や問題点などについても触れていきます。
サイディングとは、どの様な外壁材なのか
日本の住宅でサイディングが外壁材として使われる以前は、主に木板や土壁が外壁材として使用されてきました。当時の住宅は躯体となる壁面が、そのまま外壁なのが一般的でした。
江戸の頃から木造家屋が密集する日本の住宅地では、大火災や戦争による空襲での延焼に悩まされていました。その後、戦後になり住宅への防火対策の考え方が広がっていきます。
そして一部の建物に使われていたセメントに砂と水を配合したモルタルが、住宅の外壁として使われる様になっていきます。
モルタルは熟練した職人による左官仕上げの必要性や、工事期間の長さやコストの高さ、地震の際の強度の面などから、より生産性の良い外壁材の需要が求められる様になりました。
サイディングは耐火性に優れ、製造コストが低く、施工が容易などの理由により、1990年頃から住宅の外壁材としてサイディングボードが多く使われる様になります。
これまでのモルタルは住宅を建てる現場で材料を配合し、住宅の壁面として造り上げます。それに対してサイディングは工場で同じ形状のサイディングボードを製造した後、住宅の建築現場に運んで住宅の躯体となる壁面に取り付けて外壁にします。なのでサイディングは工場による大量生産が可能なため、製造コストを低く抑える事ができます。
住宅の建築現場でも壁面に取り付けるだけで外壁が造れるので、モルタルの様な匠の左官仕上げの必要もありません。
現在では"新築される住宅の約70%にサイディング"が使用されるまでに普及しました。建築作業員の減少や資材費用の高騰など、住宅建築原価を抑えるためにも、よりサイディングの需要が増えていくと思われます。
サイディングには素材により種類があります
住宅の外壁材として使われるサイディングも、素材によって種類があります。モルタルとは違い、サイディングボードに使われる素材により特徴が異なります。
■窯業系サイディング
セラミックやセメントなどの素材となる粘土や石灰等の非金属材料を高温で加熱処理して焼き固め、様々な製品とする工業を窯業(ようぎょう)と呼びます。窯(かま)を使用して加熱処理するため窯業と呼ばれ、窯業系サイディングも同様に作られます。
窯業系サイディングは、セメントに繊維質材料を混合して高温で圧縮し、焼き固めて作ります。
レンガの様な焼き物のため、コンクリート同様に重量があるため、製造後の移動や現場への運搬方法を考える必用があります。製造後のサイディングは、素焼きのセメント状態で出来上がります。そのため製造後サイディング表面を塗装などでコーティングしてあげないと、外壁として住宅に取り付けても、雨水などを吸収していってしまいます。
サイディングだけの状態では非常に水分を吸収しやすい外壁材であると言えます。
窯業系サイディングを外壁材として住宅に取り付けた後には、必ず塗装で保護してあげないと雨水や湿気を吸収してサイディング内部から劣化を起こします。
窯業系サイディングのデメリットが目立ちますが、とにかくコストを抑えて製造することに長けています。他素材のサイデイングに比べても、大量に安くつくれるメリットから、ここまで普及しました。
ちなみに、旭化成のヘーベル(ALC)は、窯業系サイディングとは異なる建材ですが、工場で製造された外壁材を住宅へ取り付ける点では同様の工法だといえます。
■金属系サイディング
金属系サイディングの素材には、ガルバリウム鋼板やアルミニウムが主流です。窯業系サイディングに比べて、薄い鋼板状に作れるため、軽量な外壁材ができます。
外壁材が軽量なため設置する住宅基礎への負担や、脱落の危険が少なくなります。素焼きの窯業系サイディングとは違い、水分を内部に吸収してしまう事もありません。
ガルバリウムやアルミニウムなど、腐食に強い素材を使用する金属系サイディングですが、塗装などで表面を保護しなくても大丈夫という事ではありません。
外壁材として屋外に設置されるため、酸性雨や紫外線の影響を受ける事で、金属系サイディング表面の艶が無くなるなど、美観が損なわれていきます。腐食に強い素材ですが、絶対に腐食しない金属ではありません。腐食を起こし難い素材だと理解して、金属系サイディングへも塗装を忘れないで下さい。
デザイン性では金型に様々なデザインが施せる窯業系サイディングの方が、加工がしやすくてデザイン性も豊富なため、金属製よりも選択肢が豊富です。
製造技術が向上から、金属系サイディングでも複雑な形状の加工も可能になっています。金属系サイディングは、新築時よりも改築やリフォームの際に、使用される事が多いです。
■樹脂系サイディング
石油系のプラスチック樹脂を金型に流し込み、製造されるサイディングです。アメリカなど欧米では、古くから一般的に使用されている建材です。
酸性雨に強い(酸化による腐食)という利点があります。石油系材料のサイディングのため、耐火性には問題があり、密集した住宅の多い日本では使用される事が少ないです。
住宅同士の距離があり、敷地も広いアメリカなどでは、延焼の恐れもあまりありません。
窯業系サイディングを使用するメリット
窯業系サイディングは、高温で加熱処理されて製造されるため、ロケットの耐熱タイルにも使われているセラミックの様に耐火性に優れています。
窯業系サイディングには国土交通省の定める、1時間準耐火構造に認定される物もあります。
耐震性にも優れていて、地震によるサイディングボードの脱落など、外壁破損も起きにくいです。
阪神淡路大震災でもサイディング外壁の住宅は、外壁脱落が少ないとの報告もあります。燃えにくい素材という事からも、窯業系サイディングは地震時の延焼防止にも期待されます。耐久性があり延焼しにくい住宅だと、資産価値も高く評価される事になります。
工場での大量生産が容易に行え、生産性が高く非常に安価に製造ができ、成形時の金型に様々な形状への加工が施せるためデザイン性も豊富です。
リフォーム時にも外壁の模様が選べるなど、選択の幅が広いのも特徴の一つです。
窯業系サイディングに潜む問題点
優秀な窯業系サイディングですが、メリットばかりではありません。一般的に新築後、住み続けて10年程経った辺りで、住宅の塗り替えを検討します。
10年経過後の住宅塗り替え時に、窯業系サイディングの問題が見えてきます。
10年も経過してしまった時には、窯業系サイディングへ新築時に施された、塗装の保護効果が著しく低下した状態になっています。
そのため、住宅の塗り替えを検討した時には、サイディング自体が劣化を起こしています。
サイディング製造メーカーが公表している試験数値にも、新築後の窯業系サイデイングの耐久年数は約3~5年と記されています。
住宅の立地環境により劣化の程度は異なりますが、10年経過状態ではサイディング内部に雨水などの水分が吸収されています。
保護効果の失われたサイディングは、スポンジの様に水分含みやすい状態になり、サイディング内部から水分で膨張して、歪んでしまいます。
サイディングボードが歪んで変形した事で、固定している壁面との間に隙間ができます。その隙間の空間に雨水が浸入して、住宅内部へ雨漏りを起こす原因に繋がります。この状態で塗装を施しても、下地との隙間への雨水浸入を防げません。
歪んだサイディングを下地へ固定し、隙間を無くす補修を行う必要があります。釘やボルトでサイディングを、下地に再固定する補修をしてから塗装を施す必用があります。
水分を含み歪んだ状態のサイディングでは、外壁にクラック(亀裂)が発生したり、外壁材が割れるなどの破損の原因に繋がっていきます。
サイディングが破損した状態までに進行してしまうと、新しいサイディングボードへの交換が必要になります。
交換の際には模様や凹凸が同じデザインのサイディングが製造終了している場合が多くなっています。デザインの異なるサイディングが一部分だけ取り付けられていると、住宅の外観に違和感のある状態で仕上がってしまいます。
塗装の保護効果が低下する事による劣化は、サイディングだけではありません。サイディング外壁は工場で作られた一定サイズのボードを、複数枚住宅へ取り付けて外壁を作ります。複数枚のボードを取り付けるのでサイディング同士の継ぎ目には隙間があります。
その隙間からの雨水浸入を防ぐために、サイディング継ぎ目へシーリング処理を施すのですが、このシーリング材も塗装の保護効果低下によって劣化をします。シーリング材の主な成分であるシリコンが、太陽光にある紫外線の影響を受けて変質します。変質によって硬化して収縮を起こし縮み、隙間を補えなくなっていきます。
収縮して弾力を失ったシーリング材は、気温の変化による外壁の伸縮に対応できず、サイディング継ぎ目の隙間から雨水浸入による雨漏りに繋がってしまいます。
この隙間の防水効果を回復させるためには、劣化して機能を失ったシーリング材をサイディング継ぎ目から取り除き、新しいくシーリング材で隙間を塞ぐ再処理が必用です。サイディングボードだけではなく、これを繋ぎ合わせるシーリングにも補修が必用になるため、塗装の保護効果が失われる前の早い段階での塗り替え工事を考えることが大切になります。
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