軒天修理方法について
軒天のベニヤ板が傷んでいませんか?
建物上部の屋根にあたる箇所が平坦な屋上になっているビルなどにはありませんが、向かい合った傾斜する三角屋根の一戸建て住宅には必ず設置されているのが「軒天」です。
軒天には木製のベニヤ板を使用したものが一般的で、雨や紫外線などの影響を受けて劣化していきます。木製ベニヤではない繊維質素材で作られた比較的耐久性のあるケイカル板(ケイ酸カルシウム板)を使用した軒天の場合でも、雨風や紫外線等の外部刺激を受け続ければ劣化してしまいます。
この項目では、傷んで劣化が進行してしまった軒天の修理工程をまとめています。
傷みが気になっていたり、住宅塗り替え工事をご検討の場合の参考にご覧下さい。
住宅のどの部分が「軒天」なのか!
「軒天」は画像にある様に外壁から外側に張り出している屋根部分の事で、屋外に見られる屋根なのですが、これでも天井の一部です。
見た目では外壁から張り出している「庇(ひさし)」や「小屋根」の様ですが、完成した屋根をそのまま住宅に載せたと考えると天井だと理解できると思います。そのため軒天は「軒裏天井」「軒天井」とも呼ばれますが、「軒天」と略されるのが一般的になっています。
日本の様な密集した住宅地が多い地域では、特にとなりの住宅から火災が発生した場合に自分の家へ燃え移り延焼するのを防ぐため「軒天」には燃えにくい素材を使用する防火対策が必要になってきます。
軒天は張り出している事で、住宅の他の部分よりも燃え移りやすいためです。また、天ぷらから出火するなど自宅内から出火した際に、炎が窓から吹き出して軒天をつたって屋根に燃え移るのを防ぐためにも耐火素材を選ぶ必要があります。
なので軒天の修理や改修をする際には、安価な木製のベニヤ板よりも値段は上がりますがケイカル板(ケイ酸カルシウム板)などの耐久性のある素材に変える事をオススメしています。
軒天修理や交換をする際には有孔板(穴の開いているボード)や、軒裏換気口を設置する事で屋根裏の内部結露を防止のする事もできます。
軒天と霧除けの違い
軒天と霧除けは両方とも外壁から張り出している屋根部分で見た目が似ていますが違いがあります。
「霧除け」は窓や出入り口などの開口部上部に設置される小屋根の事を指し、先程も解説した様に「軒天」は軒裏天井とも呼ばれる外壁から出ている天井のため屋根ではありません。
また、霧除けは軒天の様なメインの本屋根とは異なり、窓や玄関などの出入口上部に雨避けや日差し避けとして設置されている「庇(ひさし)」としての役割を持っています。
霧除けは本屋根の下にまた小さな屋根がある感じです。もちろん軒天にも延焼防止とあわせて霧除けと同様に「雨避け」「日差しよけ」効果も持っています。
軒天を修理する方法と工程
実際に傷んでいる軒天の修理工程を紹介していきます①劣化した軒天ベニヤ板の取り外し
修理する軒天は土台となる木製の部材と、そこへ取り付けられたベニヤ板により構成され、軒天を雨や紫外線から守るため表面へ塗装が施されている作りです。
塗り替え時期の経過で塗装の保護効果低下や、住宅立地の環境の影響などから、軒天の木製部材の劣化が進行して腐食してベニヤ板が剥がれている状態です。
傷んだ状態で修理を行わないと、劣化した軒天部分から屋根内部へ雨水が浸入して雨漏りに繋がります。住宅内部や基礎自体を腐食させるなど、お家を悪くしてしまう原因にもなります。軒天部分の劣化が進行する事でも、雨漏りに繋がってしまうのです。
それでは、傷んでいる軒天を修理していきます。
まずは傷んで剥がれているベニヤ板を取り除くために、固定している釘を外します。
②軒天内部の土台などへの傷み具合を確認
軒天を固定していた釘を外した事で、縁に掛かっている板を取り外せる様になりました。
このベニヤ板を取り外すことで軒天内部の土台などが確認でき、腐食等の痛みが内部で起きていないか見つけられます。
軒天のベニヤ板を支えている土台部分の木材も傷んでいる場合は、土台となる部材も新しい材料へ交換する必用があります。
軒天ベニヤを新しくしても内部の土台部分が腐食などで傷んでいると、内部の劣化はそのまま進行して、軒天ベニヤを支えるための耐久性も保てません。
③土台部分へ軒天ベニヤ板を固定する
軒天内部を確認して土台部分の修理の有無判断後にベニヤを取り付けます。
新しい材料を設置箇所のサイズに加工して、軒天にベニヤ板を取り付けます。
軒天に取り付ける板材には種類があり、厚みのあるベニヤ板を取り付ける場合には、主に釘を使用して土台へ固定します。
ベニヤ板や※ケイカル板を使用する場合には、ステープルガン(タッカー)と呼ばれる工具を使用して固定します。
タッカーは金属製の針を打ち出す建築用の強力なホッチキスの様な工具です。タッカーの針の長さにより、板が厚い場合などは使用できない事もあります。
※ケイカル板は「けい酸カルシウム板」の略で、石灰等に繊維質材料を配合した板材です。繊維質なので衝撃に強くて、不燃性の材料です。(現在は石綿(アスベスト)は使用されません)
ベニヤ板よりも耐久性・耐水性に優れている「ケイカル板」への交換をオススメしていますが、他にも軒天に適する素材はあります。
「スラグ石膏板」は 製鉄所で鉄を作る際に鉄鉱石から鉄以外に出てきた金属のスラグを石膏に配合させたリサイクル素材で、耐熱・耐火性に優れていますがケイカル板よりも値段は高くなります。
「スレート板」はフレキシブルボードとも呼ばれるケイカル板と同じ繊維強化素材ですが、こちらはセメントを主原料としています。
スレートは屋根にも使われている様に衝撃や湿気に強いですが、その分スラグ石膏板以上にコストは掛かります。
軒天の素材を選ぶ場合に、耐水性、耐火性を一番に考えた上で工事費用と検討するのが良いでしょう。
④軒天の継ぎ目や接合部分へシーリング処理
軒天にベニヤ板を取り付けて土台部分への固定ができましたが、繋ぎ合わせた軒天ベニヤや設置箇所の壁面との隙間から雨水が浸入するかもしれません。
これでは雨漏りに繋がる原因となるため、継ぎ目や隙間に防水対策を施します。
軒天ベニヤ板の継ぎ目やつなぎ目には、雨水の浸入を防止するためのシーリング材によるシーリング処理を施して隙間を塞いでいきます。
「シーリング材」はゴムの様に弾力性のあるシリコン素材で、気温変化による住宅部材の伸縮が起きても伸縮性があるので隙間からの雨水浸入を防ぐ事ができる素材です。
塗装や建築現場では昔からコーキング材とも呼ばれて使用されてきましたが、呼び方が違うだけで同じシリコン素材のシーリング材のことです。
またシーリング材はチューブ状の容器に入っている事が多くそのままでも使えますが、効率的に使うためコーキングガンという器具に取り付けても使用できます。
コーキングガンと聞くと、コーキング材とシーリング材が同様のものだと分かるかもしれません。
⑤軒天を保護するために塗装を施す
軒天の材料同士の隙間をシーリング材で塞いで、雨水浸入防止の防水ができましたが、シリコンが完全に硬化(固まる)しなくてはいけません。
隙間を塞いだシーリング材がベトついたりして半乾きではなく、完全に硬化した事を確認して次の工程へすすみます。
修理の仕上げとして軒天を雨風などの外部刺激から守るため、防水効果もある塗装を施していきます。
塗装を施す事により、雨水や紫外線などから軒天を保護する効果があります。
雨水による木製部材の腐食や紫外線の影響での※シーリング材の変質など、耐候性に優れた塗料で塗装を施す事により、軒天を劣化から長く守れます。
※シーリング材は、紫外線により変質する事で、硬化して収縮してしまいます。収縮により軒天継ぎ目に隙間ができる事で、雨漏りに繋がってしまいます。
共通する修理の流れは、この様な内容で行われます
結露防止に軒裏の換気を考える
軒裏換気口や有孔板の取り付けで内部結露防止
屋根や外壁以外からも雨漏りは起きるので注意して下さい。
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