特集「可塑剤」について
現代社会において無くてはならない可塑剤
可塑剤(かそざい)と言われても、日常生活の中では聞く機会が無いと思います。しかし、身の回りで使われているプラスティックやゴム製品に可塑剤は深く関わっています。可塑剤が無くなってしまうと、生活が不便になると言っても過言ではありません。
ここでは、住宅塗装にも深く関わっている重要な素材「可塑剤」について解説していきます。
住宅塗り替え工事をご検討の場合の参考にご覧下さい。
可塑剤とは、どの様なものなのでしょうか?
可塑剤(かそざい)とは、塩化ビニルを中心としたプラスティック類(合成樹脂)や天然ゴム(天然樹脂)などを柔らかくして、柔軟性を持たせるため使用します。
これらの"高分子物質に加える添加剤"が可塑剤です。主に塩化ビニルを柔らかくする目的で使用され、住宅では雨樋などに使われています。
塩化ビニル(プラスティック)は常温では、分子同士が強く引きつけ合って硬い状態です。塩化ビニルを加熱すると分子の引き合う力よりも、熱運動エネルギーの方が勝り、分子同士の距離が広くなり、柔らかくなります。その広くなった分子間に可塑剤を加える事で、常温でも柔らかさを保てるのです。
可塑剤で柔らかくして※塑性を強くする事で、加工や整形をしやすくします。柔軟性を持たない樹脂材料は、時間の経過により硬化して、劣化を起こしやすくなります。
※塑性(ゴムの様に力を加えた後に放すと元の形状に戻る性質)
代表的な可塑剤の紹介
可塑剤には多くの種類があり、それぞれ塩化ビニルに加える事で異なった特性を発揮します。
一般的には、優れた特性を持つ、約30種類の可塑剤が使用されています。
その中でも、代表的な可塑剤をいくつか紹介します。
フタル酸エステル
無水フタル酸とアルコールのエステルです。
汎用性があるので全可塑剤の約半分を占めます。エステルは化合物との縮合反応で得られる物質の事で、重合体したものがポリエステルです。
塗料やシーリング材、接着剤などもこの可塑剤が使用されます。
トリメット酸エステル
トリメット酸とアルコールのエステルです。
耐熱、耐候性に優れた可塑剤です。耐熱電線被服や合成皮革等に使用されています。
アジピン酸エステル
アジピン酸とアルコールのエステルです。
低温、高温に対する耐熱性を持つ可塑剤です。身の周りでは食品用のラップ等に使用されています。
この他にも様々な特徴の可塑剤が開発されています。
外壁塗装と可塑剤の関係
建物の外壁に気密性や防水性を持たせるため、サイディングの継ぎ目や外壁の隙間などに"シーリング材(コーキング材)"を注入して塞ぐ処理をする事があります。
隙間を柔軟性のある材料で塞ぐ事で、気温変化による外壁の伸縮が起きても、シーリング材の弾力により隙間ができずに密閉を維持してくれます。
シーリング材の主成分はシリコン樹脂なので、防水効果で雨漏り防止に繋がります。そのシーリング材を柔らかくして、使用しやすくしているのが可塑剤です。
収縮膨張を繰り返す外壁には柔軟性を高める可塑剤が必要不可欠です。また可塑剤は、塗料に含まれていたり接着剤などにも欠かせない添加剤です。
外壁塗装でも可塑剤の役割は重要です。
外壁塗装で起きる可塑剤の問題
サイディング継ぎ目や外壁のクラック(亀裂)に対して、シーリング処理後を施します。シーリング処理後の外壁へ塗装を施した後に、可塑剤により問題が起きる事があります。
それが「可塑剤移行」という問題で、「ブリード現象」とも呼ばれます。
可塑剤移行はシーリング材に含まれる可塑剤が、約1~2年の時間を掛けて徐々に塗装後の塗膜表面へと可塑剤成分が染み出してきます。
染み出した可塑剤は塗料の成分と化学反応を起こして塗膜を変質させます。変質してしまった塗膜表面はベトついた状態になってしまいます。
塗膜表面がベトついた状態では、雨水や排気ガスに含まれる化学物質や汚れが付着して、外壁を痛める原因になったり、外壁が汚れて美観を損なう事になります。
住宅の見た目が汚く美観も失われ、住宅の外壁を早く劣化させる原因に繋がります。
可塑剤移行を防止する対策を施す必要があります。
可塑剤移行(ブリード)を防ぐためには
可塑剤移行の発生を防止するには、どの様な対策が必用なのでしょうか?
主に、2つの方法でブリード現象を防ぐ事ができます。ブリード現象を起こさせない方法と抑制する方法があります。
①ノンブリードタイプのシーリング材を使用する
最近のシーリング材には、ブリード現象を起こさせない対策を施した製品が主流です。それが「ノンブリードタイプ」のシーリング材です。
可塑剤移行を起こしにくい、可塑剤とは異なる添加剤を使用したシーリング材です。新築や改修工事で使用する場合には、このタイプが使用されています。ブリード現象による問題が現れてから、ノンブリードが開発されて普及しました。
②ブリードオフプライマーを使用する
新築や劣化したシーリングの再処理を行う場合にはノンブリードタイプのシーリング材が使用されます。
しかし、すでにブリード現象が発生してしまった場合には、どうしたら良いのでしょうか。ブリード現象を起こした外壁に上から塗装を施しても可塑剤移行を繰り返します。
この様な場合には「ブリードオフプライマー(可塑剤移行防止材)」を使用します。ブリード現象を起こしたシーリング部に直接塗布する事で抑制できます。
サイディングの継ぎ目の様な箇所は劣化したシーリングを除去すれば良いですが、外壁のクラック(亀裂)の補修で使用した場合は、この方法で対策を行います。
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